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あれこれ

Nick Lane: The Vital Question 途中

The Vital Question: Why is life the way it is?

The Vital Question: Why is life the way it is?

Nick Lane の The Vital Question を audible で聞いている、とても面白い。でも著者の上から目線に時々イラっとしてしまう(ナレーターがそれを増幅してるのもある)。自分のアイデアや仮説を紹介する前に、「広く信じられている仮説」を引き合いに出して解説し、その論に対する穴を批判して自分の論を展開するという構成をとることが多い。でもその「批判」自体は彼のアイデアじゃなかったりする(=その"広く信じられている仮説"に対する批判自体、よく言われてることだったりする)のに、この著者はまるで自分だけがその仮説の欠点を知っているかのように書いている。つまり、「こういう広く信じられている仮説もあるが、こういう批判もある」とは書かずに、「こういう仮説があるが、それはこういう理由で間違っている!なぜこんな明らかなことに気づかなかったのだろうか?」と書かれている。まあいちいち目くじら立ててもしょうがないので一応スルーしながら聞いてはいるのだが、モヤっとした感情が発生するのは止められないのだった。

たとえば、熱力学や散逸構造的観点から進化現象を説明してるところ。 生物学/博物学的な観点からの「広く信じられている進化現象の考え方」を批判した後に、「進化はエネルギーが constraint だと考えればすべてがメイクセンスである、この本を読めばそれはわかるだろう」と自分のアイデアに繋げるところがいちばんのモヤッとポイントだった。とは言っても、読み進めれば2-3章とかでプリコジンやヴェクターズホイザーはでてくるし、そのほか彼が支持する仮説の研究者は結構なディテールででてくる。ただし大きなクレームを書くときなどは自分のアイデアと過去の人の成果に明確な線は引いてない印象を受けた。どこからが著者のユニークなアイデアなのかがいまいちはっきり書かれていない。一般向けの本ではあるのだろうが、本の冒頭でも一般向け解説化学書というよりはダーウィンみたく「著作でアイデアを発表する」のは大事だとか言ってるので(そして内容的にも明らかに一般向けというには難しいだろう、生化学の学部教育は要る)、その辺のアイデアラインをうやむやにしないで欲しかった…

とはいいつつも、その辺のトーンを気にせず読んでる分には、極めてわかりやすい!面白い!まだ全体の半分くらいで、生命の起源はアルカリ deep vent じゃないかというところまで読んだ。私の場合この辺の内容はいろんな論文や総説で掻い摘んだ虫食い知識しかなかったのだが、それが串を通してわかりやすく説明されている。ひとつモヤッとしたのは Wächtershäuser の扱い;彼のいう Hydrothermal vents theory が働かないのはわかるが(暑すぎて有機分子が分解する)でも彼は Miller の実験がもてはやされた時代に Metabolism First という重要なアイデアを提唱したのであり、Lane たちのアイデアもそれを引き継いだものだと思うのだけど。著者が Wächtershäuser に対してあまりリスペクトがないような印象があって、なんだかな。なんども引用はしてるけど(でも主に批判するために)。

ただ、確かに文章(とくに第1章)のスノビッシュな感じをナレーターが素直に表現してるのだけど、第2章以降にある普通の文章のところもナレーターが同様の pretentious な声色で感情を込めて喋り続けてる気はする。それが必要以上に著者のキャラを作り上げているかもしれない。文字で読んだらまた違うかしら。こういうノンフィンクション系は感情を込めすぎないナレーターのほうがいい。

というかんじで常に著者(もといナレーター)のトーンにモヤッイラッとしつつ内容的にすげー面白いわかりやすいと感動しながら読み進めている。

でもビルゲイツのコメントは真逆だった:

ニックは一貫して科学者らしい物腰の人物だ。彼の本を読んだり彼と話しているとき、私はニックが強弁していると感じたり、読者をたぶらかしていると感じたりしたことは一度もない。誰かの仕事を引用している場合にはどの文献を引用しているのか明快だし、何を根拠に彼が自身のアイデアを立ち上げているかも明快だ。自分のアイデアのいくつかが間違っている可能性があれば、彼は他人に指摘されるより先に自分で指摘してしまうだろう。

日本語版

生命、エネルギー、進化

生命、エネルギー、進化