Subscribed unsubscribe Subscribe Subscribe

stuff

あれこれ

酸化的リン酸化・電子伝達系・細胞呼吸

むかしは大腸菌しか扱っていなかったが、最近は嫌気性細菌 anaerobe や微好気性細菌 microaerobe なども使うようになったので、細胞呼吸 respiration についてイチから勉強した。覚えている範囲でここにメモる。日本語には良い微生物生理学の教科書が無いようなきがする。あったら知りたい。

細胞の中でおこるエネルギー変換

f:id:yashima1:20170226231752p:plain:w500
Bacterial Physiology and Metabolism, p.98

  • 生物は、たくさんエネルギーをもつ栄養から電子を奪って、プロトン勾配(浸透圧エネルギー)または ATP(化学結合エネルギー)に貯める。酸化還元反応によってエネルギーを取り出すのだ。
  • 地球上の生物のエネルギーは、大元は太陽の光エネルギーまたは地球にある高エネルギー無機物や地熱から由来している。すべてはビックバンからはじまりエントロピー増大の法則に従うのである。散逸構造である。

エネルギー源たち

  • 光(autotroph)
    • 光エネルギーを使って水から電子をひっぺがし、膜状で電子をわたしてプロトン勾配をつくる
  • 有機物(chemoheterotroph)
    • 有機物栄養をいろんな代謝経路で分解してピルビン酸アセチルCoAにしたあと、TCAサイクルを回して電子/エネルギーを NADH や FADH2 などに貯め、膜状で電子伝達系を使ってプロトン勾配をつくる
  • 無機物(chemolithotroph)
    • H2SやNO2などの(グルコースほどではないにせよ)電子リッチな無機物から電子をひっぺがして Fe-S や cyt などの電子キャリアに貯めたりプロトン勾配に直接変えたりする
  • つまり
    • 1) 高エネルギー/電子リッチ化合物から電子をひっぺがし(エネルギー&電子ソース:光+水 or 有機物 or 無機物)
    • 2) 電子伝達系などを使って電子を受け渡すことで膜を介したプロトン勾配をつくり
    • 3) そのプロトン勾配のもつ「勾配がない状態に戻りたいエネルギー」を使ってATP合成酵素がATPを合成するのである

酸化的リン酸化・電子伝達系・細胞呼吸

酸化的リン酸化 oxidative phosphorilation という単語は直感的にイメージがわかないのであまり好きではないのだが、要は電子リッチな高エネルギー化合物を酸化(つまり電子をひっぺがし)、細胞膜上で次々と電子を渡す過程でプロトンを片側からもう片側に汲み出してプロトン勾配をつくり、その勾配の力でADPをリン酸化してATPをつくるというもの(とてもわかりにくい)。日本語の場合「oxidation = 酸化」と「phosphorilation = リン酸化」と、酸化という単語が2回出てくるのがややこしくしているきがする。

電子伝達系 electron transport chain のほうがかなりポイントを得た表現方法である。でもこれだと電子が伝達していることしか表現しておらず、ポイントは電子伝達によってプロトン勾配が作られてそれがさらにATPを合成しているところである。Electron transport proton gradient ATP synthesis? 余計わかりにくいかもしれない。そもそも仕組み自体が直感的じゃなさすぎるのがいけない。

細胞呼吸 Respiration も大変ややこしい言葉ではある。これはむしろ最終電子受容体を意識した単語かもしれない。高エネルギー化合物から電子を奪って渡して最終的に電子を落っことすのが分子状酸素 O2 であった場合、これは好気呼吸 aerobic respiration と呼ばれる。一方で電子を渡すのが無機物(NO3-など)であった場合、嫌気呼吸 anaerobic respiration と呼ばれる。酸素は超電子を受け取りやすい(=電子を受け取るとたくさんのエネルギーを放出できる)ので、酸素を最終電子受容体に使うとエネルギーリッチ化合物たちのもつエネルギーをさらに効率よく使えるのだ。3階から落としたボールを2階で受け取るのが1階で受け取るのか穴を掘って地下10m で受け取るのかで受ける側の衝撃は違って、酸素はその深さ max な分子なのである。大昔の地球の大気にまだ O2 がなかったころ生物は嫌気呼吸をしていてエネルギー取り出し効率もさほど高くはなかったが、光合成の副産物として O2 がつくられたとき、うまく使えばエネルギー取り出しまくり装置になれたのだ(逆に電子を奪いまくるのでO2 からO2-やH2O2などが生まれてしまい毒性もとても高かったのだが)。

ただし、以上3つの単語は微妙に違うことも表現している;おそらくその単語が生まれたのは歴史的経緯があるのだろうが(今ほど分子メカニズムはわかっておらずブラックボックスも多かっただろうし)、今の私の感覚でいえば、電子伝達系という言葉はそのシステム(タンパク質たち)自体を指す言葉であるのに対し、酸化的リン酸化という言葉はATP合成の現象を指す言葉だと思う(ソースは無い、あくまでも感覚)。細胞呼吸という単語は、好気/嫌気呼吸を区別するときや発酵 fermentation(細胞膜上での呼吸/電子伝達系/酸化的リン酸化を使わずに細胞質中で化学反応だけで代謝すること)と区別したいときに使うようなきがする。

ミトコンドリア?

この電子伝達系に関して、生化学や分子生物学の教科書ではミトコンドリアで説明されていて他の生物について言及がほとんどないのだが、それも物事をややこしくしているようなきがする(というか私はそのおかげで長いこと混乱していた)。真核生物 eukaryotes において電子伝達系が存在するのはミトコンドリアだけであるが、ほかの真核生物 prokaryotes(真正細菌 eubacteria、古細菌 archaea)たちにミトコンドリアはない(むしろ真正細菌のひとつである alphaproteobacteria がミトコンドリアの祖先である)。ミトコンドリアは電子伝達系を理解するのに便利なシステムではあるけれど、電子伝達系自体はすべての生物に共通する極めて普遍的なエネルギー生産システムなのだ。

なのでまずミトコンドリアを例にとってタンパク質等のメカニズムを学び、そののち他の微生物でどうなってるのかを学ぶのが効率の良い勉強方法である。

On the origin of respiration: electron transport proteins from archaea to man | FEMS Microbiology Reviews | Oxford Academic

(つづく)

参考